「ワールド・オブ・ライズ」

 リドリー・スコット監督、レオナルド・ディカプリオラッセル・クロウ出演のイスラムテロ組織とCIAの暗闘を描いたスパイもの。
 まあ感想としては、「ハニ、カッコいいよ、ハニ」の一言。
 もちろん主演の2人も良い仕事をしているとは思いますが、なんせこのヨルダン情報局のボスがスゴすぎ。ダブルのスーツを華麗に着こなし、その立ち振る舞いはまるで英国紳士のよう。豪奢な自宅、美しい妻、外では金髪美女を口説いてしまうなど男の夢そのものといった感じで、その上頭が良く、仕事には一切の妥協しないというタフガイぶり。その彼が、狡猾で野心的な「嫌なアメリカ人」ホフマン(ラッセル・クロウが好演)をあしらいながら、ディカプリオ扮するエージェントフェリスを手玉に取っていく様はホンキで惚れる男っぷり。ハニを演じるマーク・ストロングの佇まいを眺めているだけで、ご飯3杯はいけます。
 リドリー・スコット好きの人にはよくわかると思うんだけど、今回のCIAとGIDの対比は、「キングダム・オブ・ヘブン」に於けるキリスト教徒とイスラム教徒との対比と同じだと思いました。聡明で紳士的、仁義に厚く、文明的なイスラム圏の人々と、野蛮で狡猾、エゴイスティックなキリスト教徒(ヨーロッパの人々)という図式(ハニとホフマンの見た目が象徴的)は、イギリス人(大陸人でない)であるリドリー・スコットのならではの立ち位置ではないかと思います。(脚本家が同じ人というのもあるな。)
 それはさておき、最近は髭面もさまになってきたディカプリオが、現場で右往左往するCIAのエージェントを見事に演じています。「ブラッド・ダイアモンド」以降、ようやくワイルドでタフな役どころにハマってきた感じがします。上司役のラッセル・クロウは「嫌な上司」を見事に演じており、少し増量ぎみの容姿を含め、アメリカンなマイホームパパでありながら、部下でも平気で裏切る良心の無さが、クロウ自身のイメージとあいまっておかしかったです。
 ただ少し残念なのはとってつけたような「恋愛」要素。一応フェリスが罠にはめられる重要な役割を持ってはいますが、男だけのハードな諜報の世界の話としてやっても良かったかなと思います。っていうか、あらゆるスパイもので作戦が失敗しそうになるのは女がらみっているのは基本なのね。でも最後にデカプが女とくっ付いてハッピーエンドにならなかったのは良かったと思います。
 それとリドリー・スコットといえば、昔から映像派の演出家として有名ですが、今回は割と物語を綺麗に語る方に重心が向いていて、複雑なお話なのに割と混乱しないといういいバランスがとれていたと思います。(最近はすっかり職人的に巧い監督になったとは思いますが。)それでもかつての片鱗が見えたと思える点が1つ。作中監視カメラ(無人偵察機)が重要な役割を与えられているのですが、そこから配信される映像が風景的に美しいという初めての試みが成功していたと思います。
 派手なドンパチは少なめですが、キリキリとした男同士のせめぎ合いを堪能できる良作だと思います。ただし、この映画も予告と本編の内容が大きく異なった詐欺的な面があったと思います。原題の「Body of Lies」はBodyが2つの意味を持っているという意味で深いタイトルだと思います。


追伸:
 あんまり更新しないblogという自覚はあるんですが、更新していなかった間も「アメリカン・ギャングスター」絡みで、「フランク・ルーカス」という単語でこのblogに来てくれる人が多い。(なんでかな?)
 blog始めた頃に書いた記事が検索に引っかかってこのページに来てくれる人が沢山いることが意外。思い切ってタイトルを「フランク・ルーカスの部屋」にでもしたら、もっとアクセスが増えるかな?と思案する毎日です。

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