結果報告(9月1日)

 遅めの夏休みを取る。1日は「映画の日」ということで、お出かけ。観たのは3本。

 第1作の「選挙」が日本特有の選挙戦を見事に捕らえた秀作として口コミでの広がりをみせる中で公開された第2作目は、ある種社会的なタブーに挑んだ作品。「精神疾患」を患った人を実名、モザイク無し(プライバシーへの配慮をあえて排除した)で記録した「精神」。新作の公開に合わせて「選挙」リバイバル上映ということで、2本立てを観ました。
 2本とも大変面白い作品だったのですが、話題となっている手法的な部分については、ある程度「ドキュメンタリー」というジャンルの映像作品を観ている人にとってはお馴染みのフレデリック・ワイズマンなアレ。しかしながらこの2本は、「映画」という概念を語る上で非常に良質な作品で、基本的に「劇映画」や「フィクション」しか観ない人こそ観るべき作品に成っていると思います。話題性以上に得るものがある作品なので、お近くで上映館がある方はぜひ観るべき作品。ちょっと突っ込んだ感想は別のエントリーで。

 2本目の「3時10分、決断のとき」はエルモア・レナード原作の西部劇。50年前に一度映画化されたものをこのところ小品ながらも良質な作品を連発しているジェームズ・マンゴールドがリメイク。ガッツリとした「本格西部劇」ということもあってか、客はほとんど男(それも平均年齢は高め)。2年ほど前に北米で公開され、評論家受けも良く、興行成績的にも大健闘していながらも、日本ではひっそりと公開。
 しかしながら作品の出来が非常に良いので、現在口コミで、その面白さが徐々に拡大中とのこと。
 名古屋ではもう終わってしまうのが残念ですが、ロードショウ公開作品ではないので、全国的には時間差があるものの、多くの人に見ていただきたい傑作。
 とにかく主演の二人がかっこいい。
 本作で悪漢ベン・ウェイドを演じるラッセル・クロウが放つ男の色気が半端ない感じで、スクリーン越しでも、その色香が実際に漂ってくるような感じ。最近はメタボで嫌な奴の役が続いていただけに、本気でかっこいい。
 レナードのお得意の観気力的なワル(アウトロ)を的確に演じると共に、自身の魅力を最大限に発揮した役作りは近年の仕事の中でも屈指の出来で、私生活では本気でイヤな奴という風評が定着しながらも、仕事が途切れない意味を実感できる。それと「クイック&デッド」以来の見事なガン捌きで、シーンそのものは少ないながらも、とんでもなく印象に残る。
 対する極貧カウボーイのダンを演じるクリスチャン・ベールも、複雑な内面を抱かえる中年男を好演。アメリカのパパって家族に対する責任というか、使命感(理想像)がとてつもなく大きくて、人生の自己実現の中で最大の価値を持つものとして規定されていることにタダタダ感心するのみ。
 この前観た「96時間」も仕事にかまけて離婚された父親が、失地回復とばかり娘のために暴走する話で、子供に対してここまでがんばらないと一人前の人間として認めてもらえない(自身を肯定し得ない)アメリカの男って大変だなと思いました。
 それとやっぱりクリスチャン・ベールは、陰のある一般人をやらせたら最高で、近作も後悔ばかりの人生や家族についた様々なウソのせいで負い目たっぷりの駄目なパパを説得力たっぷりに演じていて、「T4」でやった明らかなヒーローキャラが如何に似合っていないかを実感。(だからブルース・ウェインBATMANは似合うんだ!)
 今後も、少し変わっているところもあるが基本的に真面目な一般人の悲哀を表現するというそれなりに難しい役に邁進していただきたい。
 あとチャーリー・プリンス役のボブ・フォースターが美味しい。単なる野心丸出しの悪役かと思いきや、ボスに忠実な良き番頭(若頭)というキャラを的確に演じている上に、ベンの打ち出す頭脳的な行動(甘いマスクを利用して保安官を嵌めるところなど素敵!)をしっかりサポートする賢さもあり、リメイクオリジナルのキャラとして非常に光っていたと思います。(その分最後はちょっと悲しいが。)
それと50年前に作られた映画を見事に現代の映画としてよみがえらせた演出のマンゴールドと脚本家陣に大きな拍手を送りたい、お薦めです。

選挙 [DVD]

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3時10分、決断のとき [DVD]

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