「ファニー・ゲーム USA」

 ミカエル・ハケネ監督に寄るセルフ・リメイク。ハリウッド映画とは正反対の文脈で映画を撮り続けている人ですが、今回はハリウッドの俳優を使って、舞台をアメリカに移しての再映画化。この企画をハリウッドで撮ること自体がアンチハリウッドと言う感じ。とはいえ、どういう経緯でそうなったかについては詳しく知らないんですが、出来はいつものハケネ映画。ただし、僕自身はオリジナルを観ていないのでそれとの比較はできませんが、ほぼ完コピとのこと。(台詞、セット、アングル、カメラワークまで極めて意識的に再現しているとか。)
 主演(?)のナオミ・ワッツはいつもどおり美人だけど薄幸そうな雰囲気で作品には合ってます。(露出もそれなりに。)仕事を再開したティム・ロスは「インクレディブル・ハルク」の軍人より随分と良いし、役柄に合っている。(優秀な軍人役なのにあの猫背はいただけない。)息子の子役さんは目がクリクリして、なかなかの美形。そんな子どもが大変にヒドい目に遭います。
 対する二人組の青年であるポール(マイケル・ピット)はそれなりに良い雰囲気なんですが、少し年を取り過ぎかなと思いました。(若くて子どもっぽい感じが足りない)、それと一目観て悪そうな感じしてしまうのが残念。その相棒のピーター(ブラディ・コーベット)は少し抜けた感じがしてその辺のバランスは良かったと思います。(もう少し知的なキャラでもよかったかも。)
 オリジナルを観ている人も指摘していることですが、直接的でない暴力描写は非常に効果的で、本域の発声で繰り出される(台詞としての)絶叫やそれと意識させることを徹底的に計算したアングルなど、極めて考え抜かれていると思いました。それとアメリカなのにアメリカに見えない(「ブラックレイン」の日本と同じ)ところが不思議でした。
 あと、クライマックスのアレについてですが、予備知識なしで観たんで少し面食らいました。あの辺の唐突感や説明なしでやりきってしまう度胸(計算した上でのことですが)は、人の悪いハケネの面目躍如といったところで、観ている間は犯人の二人の現実感を的確に表したシークエンスだと思ったんですが、観賞後よく考えたら、あれもハリウッド的な展開への皮肉だったんだと気付いたり、やっぱ考えると面白い作品でした。
ファニーゲーム [DVD]

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