「結果報告(2月7日)」

 では週末の報告日記。見た作品は2本。
  • 「ノン子36歳(家事手伝い)」
  • 動物農場

 「ノン子」さんについては別項で、後ほど。

 「動物農場」は、イギリスの作家ジョージ・オーウェルの短編を1950年代にアニメ化したもの。長らく国内では興行されていなかった作品をスタジオジブリで配給するという。(これについてはチラシの裏にいろいろと煽り文句があったけど、制作された時点で国内に政治的なアニメという市場が無かっただけと思われる。)
 宮崎御大のありがたいキャッチコピーがデカデカと印刷されたチラシを見るに、まさに時流を捉えた鈴木Pの仕事ぶりは今回も見事。僕の観た日は休日ながらレイトショーの1日1回上映と言うことで客は多め。デートと思わしきカップルが割と多かったので、まさに鈴木Pの術中にハマったといったところか、合掌。
 実際の作品はハードな階級闘争もので、アニメとしてはヨーロッパテイストのディズニー。正調のヨーロッパ系のアニメとはちょっと口当たりが異なる。
 スターリンの写し絵であるナポレオン呼ばれる豚は最初から思想や革命の可能性を信じていない。それ故に孤児となった猟犬の子犬を私兵として育てている(最初の革命に到る決起集会にも遅れてくる)。その名がナポレオンであることは多分偶然ではなく、歴史上の人物の本質を皮肉るものでもある。
 そういう意味では、彼のライバルであるスノーボール(たぶんトロツキー)が夢想家で如何にもな革命家であることと対照的で、革命以降のソビエトという国が本当はどうであったか、というかむしろ「体制」というものが本質的にどのようなものかを的確に表現している。
 原作がイギリス人によるものなので、大陸で生まれた新しい思想の潮流に対して一定の距離をとっている。基本は「反共」意識(共産主義国への皮肉)に充ち満ちでいるのですが、作中最も気の毒な目に遭うのが真面目で実直な馬(労働者)であること、主義主張に関係なく賢く儲ける商人がいかにもずる賢そうだったりと、単純に「共産主義なんて意味ないね」という内容ではない。
 むしろ映画の最後が新たな革命の蜂起であることは、特定の政治勢力をdisるということだけでなく、「権力の腐敗」、「欲望に忠実な人間の本性」、「権威に対する妄信への警告」など、スターリン時代のソ連をモチーフにしながら、大きな声で自信たっぷりに話す人の言葉を単純に信じ、その人の作った体制を只受け入れ日々を送るだけでは、大衆はどんどん苦しい方向へ追いやられていくだけだよと警告する。たまには不満を声にして、社会的(政治的)に上に立つ人を脅かしてやる必要があると端的に指摘しています。(その結果が全く同じ結末になっても。)
 今日本や世界で起っていることが、50年以上前にほぼ予言されていたことに驚くとともに、民主主義が発明されて以降の世界が如何に変わっていないかを確認するという意味では、非常にタイムリーな作品であると思いました。

動物農場 (角川文庫)

動物農場 (角川文庫)