「デス・レース」

 blog界隈では、ダメな子扱いされてるポール・W・S・アンダーソンの最新作。ところがこれが面白い。オリジナルである「デスレース2000」とは似ても似つかない内容に変更されているということですが、別物としても観ても十分面白い。
 一昔前のB級ムービーの持っていた猥雑で強引な感じはそのままに、ゲーム的・MTV的な表現を織り交ぜながら、100分ちょっとをただただ楽しく過ごすことができる素晴らしい娯楽映画になってました。
 「バイオハザード」の時とは違ってあまり説明的な描写を多用せず、必要なことはテキパキ映像で語ることにして、わかりやすいのに退屈ではないという絶妙なバランスでサクサク進んでいきます。また、肝心なレースシーンをキチンと実写(安易なCGでないという意味)で処理していたのも好感がもてました。でも、せっかく実際の車を使ったシーンを作るなら、見にくいだけのカメラワーク(流行の臨場感系)と速いカット割りでごまかさず、チープな絵図になってもいいので、固定ぎみにしっかり見せたほうがよかったのはないかと思いました。この辺は低予算だからそういった手法を採用したともいえるので、痛し痒しかなとは思います。
 キャスティングについては、ハリウッドに来てから車に乗ってばかりのジェイソン・ステイタムは絶妙で、タフで禿なのにカッコいいという奇跡のバランスを今回も体言。ヒロインの ケース(ナタリー・マルティネス)やライバルのマシンガン・ジョー(タイリース・ギブソン)を含め、悪そうな奴をしっかり集めて脇を固めたのはよかったと思います。(ジョアン・アレンも見事な悪役ぶり。)
 また、この映画の最大の勝因は主人公の造形と行動にあって、普通のハリウッド映画だと「無実を訴える」→「真犯人を発見」→「黒幕に復讐」→「名誉の回復(ハッピーエンド)」となるところを、彼を徹底的にアウトロー(法に従う常識的な人物ではない)として描くことで、「無実を訴える前に犯人探し」→「実行犯発見・鉄拳制裁」→「どうせ生きて出所できないならウジウジやってないで脱獄」という強引でご都合主義な展開をしても、力で突っ切ることができ、そのことが最後の爽快感を生み出してしまうという、真っ当なアクション映画の定石をやりきっていたと思います。
 あと最近知ったんですが、ポールさんが「イベント・ホライゾン」の監督だったという事実に愕然。
イベント・ホライゾン [DVD]

イベント・ホライゾン [DVD]