結果報告(映画編その2)

 続いて2日(日)は ミッシェル・ゴンドリーの新作。米国用の予告を観た段階で、手づくり感タップリのちょっとオシャレな青春ものかと思ったら、本編はさにあらず。まるでケビン・スミスあたりが撮りそうなダメな男の子2人組のご近所もの。それが後半に向けて、地元愛全開の展開に。
 主な登場人物は4名。再開発の波に晒される下町で、そこで生きていくことに何の疑問も持っていない純朴青年マイク(モス・デフ)、彼の勤めるビデオレンタル店の近くで廃品回収業者をしている適度に嫌な奴ジェリー(ジャック・ブラック)、壊れかけた建物でレンタルビデオ店を営むフレッチャー(ダニー・グローバー)。ひょんなことからマイクとジェリーのリメイク映画を手伝うことになるクリーニング店の娘アルマ(メロニー・ディアス)。そこに住む様々な人たちが、2人の青年の始めた映画作りの巻き込まれていくという話。
 ゴンドリーお得意の段ボールや身近にある当たり前のものを使ったセットや衣装、小道具といった細かでチープな表現が今回もいい味を出している。学生時代に映画を撮ったことがある人は皆思わず頷いてしまうような撮影の工夫が満載。特に昼の時間に夜の光景を撮る方法には脱帽。(あとクラシックカーの写真を拡大して段ボールに貼って動かすのとかいいなぁ。)それと今回も映画の中盤にPV監督時代に培った流れるようなイメージの連続表現(まさしく横スクロール)の見せ場がある辺りが心憎い。また、二人が撮影時間を短縮するためにノン編集・順撮りという方法で突っ走るあたりが、如何にも素人作品然として面白かったです。
 あとこの手の作品にありがちな、勝ち組(成功して都会に住む人々)と負け組(貧しく田舎や下町に骨を埋める人々)の対立といった要素がほとんどなく、かといって古ぼけた街で生き生きと暮らす人々を過度に持ち上げてしまうような過剰な郷愁も無い。この映画で描かれるのは、そこにいること自体に全く何の疑問も持つこと無く、その場所やそこに住む人が好きだからといった純粋で原理的な人々を素直に描いていて、そこが素晴らしいと思いました。
 このあたりのテイストは、コンドリーが以前撮った「ブロック・パーティー」に描き出されていたライブ観たさに集まってきた地元の人たちがたまさか一つの家族のように私服の時間を過ごす様と共通していたと思います。 
 変わりゆく故郷の街とそこに住む市井の人々というのは、日本でも描かれてきたモチーフですが、伝説のジャズピアニストの存在を縦軸に、映画(ビデオ)という媒体で繋がっていく人々(横軸)が最後に一つの奇跡を引き起こす(それでも実は良い意味でも悪い意味でも何も変わらないのが切ない)ラストシーンは本当に鳥肌ものでした。
 本当にあったかとうかも定かでない昔を懐かしむような映画を観ている暇があったら、こういう作品をたくさんの人が楽しむ、そんな時代がはやくこないかと思う今日この頃でした。
ブロック・パーティー [DVD]

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