結果報告(映画編その1)

 では、この期間(10・11月ですが)僕が何をしていたかというと、主に映画とたまにライブに行く日々。でも映画を観た本数はあんまり多くないかも。それと今年はライブもあんまり行ってない状態。(でも11月は3本ライブを観ました。)
 ということで、まずは映画編と銘打って1つ目のエントリー。それじゃ順番にちょっとづついきましょう。
 まずは10月の後半から、と思ったら10月は前回更新時に書いた内容でおしまい。そこで11月1日(土)映画の日から、 なんだか久しぶりのブライアン・デ・パルマの新作。HDカメラを駆使した作品で(僕の観た劇場は画面がクリアで綺麗だった。)、イラク戦争によってアメリカ軍が駐留しているサマワで起きた未成年者に対するレイプ殺害事件を、当事者の録ったビデオ、フランスのドキュメンタリー、ニュース映像や動画サイトへの投稿等(テロ行為の準備をストリーミング放送する場面まである!)の様々な映像表現を駆使して描いていきます。
 実はこれ、「カジュアリティーズ」というデ・パルマの過去作と内容的にはほとんど同じ。ただし今回モキュメンタリー(ニセドキュメンタリー)の形態を採用しているので、「カジュアリティーズ」のようなお話は無い。映画の学校に通うために陸軍に入隊した主人公フレーク(パトリック・キャロル)が、その練習のために回したVTRを中心に進む。
 「カジュアリティーズ」の舞台はベトナム戦争で、今回はイラク戦争。もう40年近く経とうとしているのに、時間を超え、場所を変えても、軍隊や兵隊のやっていることは変わらないということを堂々と訴える骨太作品。卑劣で陰惨な行為を行っておきながら、自己を正当化し、その上道徳や規範といった意識までも溶解させていくレッドネックとおぼしき白人兵士2人のありさまが恐ろしい。
 また、全てがカメラの向こう側で起こったこと故に、次第にリアリティを喪失していく(撮るという行為に取り憑かれていく)主人公の哀れな末路に合掌。
 あと余談なんだけど、この映画を観にいった時期に、たまたまWOWOWで録った「バリー・リンドン」を観ていたので、家でもサラバンド、映画館でもサラバンドという奇妙な体験をしました。

 「その土曜日、7時58分」はシドニー・ルメットの久しぶりの作品。僕はポール・ニューマンの「評決」がスゴく好きで、一時代を築いた巨匠ではありますが、最近はあんまりいい仕事はしていないという印象。ところが今作は公開前から評判が良くて、そんなこんなで観に行った訳ですよ。
 会社で成功した兄アンディ(フィリップ・シーモア・ホフマン)とダメな弟ハンク(イーサン・ホーク)が一発逆転を狙って行った宝石店での強盗を計画するも、そのことが思わぬ悲劇を生み出し、主人公の運命を狂わせていくというもの。兄弟の父親チャールズを名優アルバート・フィニーが、弟とも関係を持っているアンディの妻ジーナをマリサ・トメイが演じています。
 あらすじからすると犯罪映画なので、そういうこともあったあるかなぁと思ったんですが、この映画R-18(18禁)で、どうしてそんなレイティングなのか疑問だったんですが、映画が始まってすぐにその答えがわかるという、ある意味度肝を抜かれるオープニング。(ホフマンとトメイの体当りの演技がスゴい。)
 その後は浅はかな考えと行いから、地獄へ一直線のアンディと人はいいけど他人に迷惑をかけまくるヘタレハンク(イーサン・ホークの顔はいいけど、どこか抜けてる感がまたピッタリ。)が対照的な運命を辿ります。まあそれにしても俳優人の演技がいい。お話を回していく何人か人物はもちろんのこと、小さな脇役に至るまで上手い人が多い。
 主役の2人が素晴らしいのはもちろんなんですが、特にジーナ役のマリサ・トメイは、昔から好きな女優さんなんですが、このところはスッカリ落ちぶれた白人を演じさせるとピカ一で、今回も中年のタダレた色気タップリで、見事なダメっぷり、見事な脱ぎっぷりです。
 あと最近は枯れてダンディな老人ないしはお父さん役が多くなっていたアルバート・フィニーが、後半で見事に化けており、子供たちも知らない恐ろしげな過去を背負った人物を見事に演じております。これこそ彼に正しい使い方だと感心しました。
 あとお話のほとんどの場面で、理性的で計算高い人物を抑制された演技でこなしているホフマンが、後半一気に豹変し、暴力に目覚めていく様は、彼にしかできないテンションのコントロールで、観ていて本当にドキドキしました。
 キチンと「痛い暴力」を描いたしっかりしたクライムムービーとして、お薦めの1本だと思います。