「ユー○アル・サ○ペクツ」みたい

 42本目、「幻影師アイゼンハイム」。

 ネタのバラし方が、以上。ってのは嘘なんだけど、最後にどんでん返し系の作品としては、タイトルに書いた作品があまりにも上手すぎるので、それ以降の作品が出来がいいor出来が悪い模造品になっていしまうのは致し方ないことなのでしょう。
 でも、残念なことにこの映画はそこまでのお話の進め方、ミスリードの提示の仕方が下手なんで、ダマされた気がしない。
 身分違いの2人、アイゼンハイム(エドワード・ノートン)と公爵令嬢ソフィ(ジェシカ・ビール)の恋の話なんだけど、前半から結ばれない2人がいかにして障害を乗り越えて、自由の地へ脱出するかというお話のメインの部分をしつこく言葉として繰り返すので、最後の「大きな消失マジック」が効果的でなくなってしまっている。(観客はある時点から展開される状況が主人公の手による幻想であることに気が付いてしまう。)
 全体としてはウール警部(ポール・ジアマッティ)の視点を通して語られるんだけど、その辺があまり統一感がなく、時にはアイゼンハイムになり、時には皇太子レオポルド(ルーファス・シーウェル)になったりと、ふわふわする。
 また平民出身のウールが同じく平民出身のアイゼンハイムに肩入れしていく様子は、奇術師としてのアイゼンハイムの才能だけではなく、決して報われない恋(階級闘争でもある)に対して果敢に挑戦する(常識を飛び越える)ことへの憧憬でもあるはず。
 それまで忠実な犬として皇太子に付き従うウールが、皇太子の犯罪に毅然と立ち向かうのはそのことの現れ。
 しかし、映画に中ではこの2人の関係よりも、アイゼンハイムはアイゼンハイムで、ウールはウールで、ソフィーはソフィーでバラバラに行動しているようにしか見えないのが残念。その上皇太子の政治的な企みまで絡んでくるからすごく散漫なことになっている。
 この辺りはやはり演出家の経験不足によるものだと思う。情報の出し入れが肝心なのに、ストーリーやキャラの内面に比重が行き過ぎていて、観客が心地よく騙されるという映画的な快感がスポイルされている。この辺りはより複雑な構成を持ちながら、最後まで見事に騙してくれる「プレステージ」なんかを勉強するといいと思いました。
 あと、感心した点を1つ。撮影監督がディック・ポープなんだけど、色調のコントロール、回想シーンでの凝った処理(わざと非常に古いフィルムを上映しているような質感やフィルムの流れ方を付け加えたり、ソフトフォーカスを多用したり。)や丸いワイプを使った場面転換など、映画の舞台(時代)を意識させ、まるで当時の見世物小屋で上映されている作品を見ているかのような加工が施されており、画面全体の雰囲気を工夫することで映画をより時代がかったものへと昇華していたのが面白かったです。
ユージュアル・サスペクツ [DVD]

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