本当の意味で上手い映画とはこういうこと

 40本目、「最高の人生のみつけ方」。

 巧い映画。これぞハリウッドという感じで、内容的には完全にファンタジーなんだけど、そうとわかっていてもいい気分にしてもらえる力作。さすがロブ・ライナー、最近劇場で公開されることが少ないのが本当に残念だと思う。
 ポイントは、ストーリーを語るときの視点。冒頭(ファーストカット)から非常に重要な情報の提示がなされ、それを受けて始まるモーガン・フリーマン演じるカーターのナレーション。
 カーターの声は、もう一人の主人公であるエドワード(ジャック・ニコルソン)の死を告げていて、そこから時間が遡る。観客は否応なしに、「どちら」が「何時」死んだのかという謎が想起される。これは非常にうまいミスリードとしてこの後、チキンと機能していきます。(そういう意味では、ファーストカットも上手いミスリード。)
 ストーリーの本線のほうは予告編でネタバレしているので、どうなるかは大体予想が付くんだけど、前半は病室内を中心とした会話劇として進行し、後半は怒涛の伏線回収。人物設定や会話の端々に、様々な仕掛けが施されており、それが最後の瞬間までキレイにつながっていく、それがすごい。
 現代の「Bucket list」は、「死ぬまでのしたいことをリスト」にするというほかの映画のタイトルでもあったことをさしているんでだけど、これがフリ→回収の見事な道具立てになっている。
 そりぁ、一生遊んで暮らせるようなお金持ちならどんなことでもできるよ、という映画的設定の嫌味な部分を逆手にとって、展開していく「お金では買えない(Priceless)」な事柄の積み重ね方が非常に上手いので、ハリウッド的ないい話を書きたい人、ハッピーな映画を撮りたい人は必見の作品でしょう。
 それにしても、主人公の2人が「家族」という価値に帰還した習慣に人生の最後を向かえるというのは、ちょっとした皮肉なんでしょうか。
 あと、富豪エドワードの秘書トマス(ショーン・ヘイズ)の人が大変美味しい役であると同時に、そうなるべくしてなる役であるという説得力を画面で表現できていたのがスゴイなあと思いました。(それにしてもエベレストに単独登頂できる社長秘書ってスゴクねぇってことですけど。)