おもしろく無い訳じゃないんだけどね。

 33本目、「ハンティング・パーティ」。

 なんとも感想が書きにくい。ハリウッド映画として、ボスニア・ヘルツェゴビナを扱っているという点は評価できるんですが、あらすじがなんともハリウッド的で乗り切れない。ブラックなコメディにもなりきれず、政治的な揶揄をこめた社会派にもなりきれないという微妙さだけが目立った作品。
 昨年だったか公開された「カルラのリスト」というドキュメンタリーを観てしまった後だと、リチャード・ギア演ずる元花形ジャーナリスト・サイモンの行動やそれによって引き起こされる事態がいかにもうそ臭く、物語の最後を完全におとぎ話として処理してしまっていることの気になります。(それってすこし逃げているのかなとも思えました。)
 やはり現実の世界は、陰謀論的な政治の作用と個々の人間の限界が絶妙なバランスを取って成り立っており、事が思うように進まないこと、解決しないことはいくらでもあります。
 そういった状況に対して、「映画だよ」、「お話だよ」、「ファンタジーだよ」と断ったとして、あのような状況の解決や物語的なオチにはならないと思いますので、それならそれで、もっと寓話的に現実を映すことが映画にはできると思いますし、そうしたほうが面白い結果になったと思います。


 悪口ばかりではなんなので、映画として面白かったところを少し。
 一番はテレンス・ハワード。今回は成功したカメラマンとして旧友サイモンを助けるダックという役どころなんですが、相変わらず子犬か小型犬のように目をウルウルさせながら、のっぴきならない状況に巻き込まれる人物を好演。
 黒人の俳優と言えば「いつも困っている顔」のドン・チードルさんと並んで、「今にも泣きそうな顔」俳優として、これからも大活躍してくれるでしょう。(笑)
 リチャード・ギアは一時の低迷を脱したようで、ハンサムだけどダメな役どころをしっかりと演じてたと思いました。この辺りのポジションにはジェフ・ブリッジズという役者がどっかりと座っていたのですが、彼は容姿的にも完全に崩れてしまったので、その後釜はギアということになるでしょう。
 コネ入社の新人ベンジャミン(ジェシー・アイゼンバーグ)は、予告よりハンサムで、さりげない知性をかもし出すことにも成功していたと思うので、これからも要注目の俳優さんかも知れません。

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