父、還る。

 34本目、「スパイダーウィックの謎」。

 フレディー・ハイモア(今回は二役、よく働くな)のことはどこかに置いておいて、観る気は無かったのですが、ジョン・セイルズが参加しているとか、スゴクいいよという評判を読んだので観てみることにしました。
 確かに離婚直後の家庭の親子関係というリアルな側面をうまく使い、人間界とそれ以外の世界との関係を上手に描いていたとおもいます。(家庭内での子供同士の関係や両親の離婚に対するスタンスの違いなど、子供たちの個性としてよく描けていたと思います。)
 それにしても、登場する妖精たちのデザインや動きがなかなかいいなと思っていたら、クリーチャー関係がフィル・ティペットなのを知って納得。全てのキャラクターが良く動く上に、生き生きとした表情をするので、見ていて飽きない。この辺はティペットの職人的なスゴさでしょう。
 同じようなシュチュエーションの「テラビシアにかける橋」では、造形は良かったと思いましたが予算と技術が足りていなかったので、動きや存在感の面で少し残念なことに。それでもWETAの仕事なので一歩抜きん出た感じはありましたが、今回はILMがいい仕事をしています。
 最後に登場するオークの変身しがらの追っかけや中盤のグリフィンの飛翔シーンなど、子役のしっかりとした演技以外にも、ちゃんとしているなあという印象でした。
 あと、離婚後なかなか自分を迎えに(助けに)来てくれない父親の存在を、同じく理由を告げることもなく出奔したアーサー・スパイダーウィック(デヴィッド・ストラザーン)とその娘ルシンダ(ジョーン・プロウライト)の関係になぞらえ、クライマックスでの主人公の選択やその後のルシンダの選択などにきれいに集約させるあたりのやり方が非常に心憎いなと思いました。

 最近では「パンズラ」などで見られた「ファンタジー」と「リアル」の関係性とでもいうべき問題が、この作品の最後でも提示されていたのが印象的です。
 どちらの世界で生きることに意味があるのか、人は本当に「人間の世界(リアル)」で生きることしか選び得ないものか。
 ルシンダは父親同様に妖精の世界を垣間見てしまうのですが、そのせいで現実世界では狂人扱い。父親がいなくなることで家庭は崩壊。何にもいいことは無いけれど、それでも「妖精の世界」を捨てることは出来ない。常識として同時には存在しえない世界の狭間で、どちら側にいることを選ぶのが幸せなのか。
 最後に死の危険を犯して帰還したアーサーとそれを迎えるルシンダの対峙した姿が印象的。(そしてその後の選択も)
 また、選ぶという行為は、本来客観的にどんな意味を持つかではなく、あくまでも主観としてそれを選び取ったものの判断によるものだということが、この「ファンタジー映画」の中でも提示され、ある結論が語られていたことが面白かったです。

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