やっぱ、一人前の男は嫁選びが重要なのか。

 19本目、「モンゴル」
 我らが(笑)浅野忠信主演、セルゲイ・ホドロフ監督の撮ったチンギス・ハーンについての映画。
 この映画で描かれるのは、浅野演じるテムジン(のちのチンギス・ハーン)が父の死後、幾度となく自らの身を襲った災厄を潜り抜けながら、モンゴル人の部族を統一し、大ハーンになるまでの過程。(これ以降の展開の続編があるとかないとか。 )
 まあ、ポイントは冒頭の嫁選びとカミナリ。
 ハーンの息子として生まれたテムジンは、わずか9歳で嫁を選ぶ旅に。最初は母親の出身部族から嫁をとるつもりでしたが、途中で休憩に立ち寄った弱小部族の村で、ボルテと運命的な出会いをし、彼女を娶ることを決めます。(ぶっちゃけボルテは言い寄られる。)
 テムジンの父は少し不満です。問題が起きそうな状況だけど、息子の意思だし、ちゃんと自分でいい女(容姿のことではない)を選んだからいいかと納得して帰路につくも、彼はタタール人に毒殺されてしまいます。
 ここから、テムジンの運命は激変。父の手下だった男には裏切られる。命は助かるも、次の春には殺しにくると宣言され、救いを求めて神の住むと言う山へ。でも辿り着けず死にかけているところを救ってくれたのが、ジャムカという少年。幼いながらも兄弟だけで遊牧を行いながら生活する彼とテムジンは兄弟の契りを交わします。この運命の出会いは、後に別の意味でテムジンの人生に大きな影響を与えることに。
 しかし、つかの間の安息の日々も長くは続かず、テムジンはハーンを名乗る様になった元部下に捕らえられ、軟禁されてしまいます。

 というように、彼は幼い時から結構ハードな人生を歩むことに。その上取り立てて強かったり、特殊な能力を持っている訳ではないので、彼の命を付けねらう勢力にいつも簡単に捕まる。ハリウッド映画じゃないから都合のいい展開はなしということで進むんですが、それにしてもテムジン捕まり過ぎ。その上すぐ逃げ過ぎ。(そういう意味では都合がいい。)
 ようやくボルテを娶り、幸せな生活を始めるけど、すぐに彼女を奪われる。ジェムカ一党の助けを得て、彼女を奪い返すも、ジェムカの部下を奪ってしまったことが因縁となり、ジェムカの弟を殺してしまうこと。互いの認め合ったもの同士がそのことがきっかけに敵対し、これが後にモンゴル族を二分する争いに発展していきます。

 全面モンゴルロケ、現地人中心のキャスティングということで、モンゴロイドな方々が多数出演。奥さんのボルテは典型的なモンゴル系の女性で、女装した白鵬横綱ね)にしか見えず。でも、容姿的に美人とは言えない彼女が聡明で、献身的な活躍をして、少し運の悪いテムジンをがっちりサポート。次第にいい女に見えてくるからあら不思議。テムジンがどうスゴいかはあんまり伝わらないんだけど、嫁のスゴさは実感出来ました。
 
 あと、テムジンは何か大きなことをする前に必ず天の神様に祈るために山に行きます。その場所で判りやすい啓示や奇跡が起こるのが西洋的かなと思いました。(神様を象徴する狼が映される。)神様に祝福されていると確信したテムジンは、自信を持って自分の考えを実行していきます。(まあ.過程が端折られちゃうのは残念ですが。)
 加えて冒頭にあったカミナリのエピソード。モンゴル人はカミナリが嫌い。実際は何も無い平原で生きていく上で落雷は命に関わる現象なのでそれに注意を払う(動けなくなるというのは、動かない方がカミナリが落ちにくい)ことは必要なこと。それに民俗的な意味合いと信仰を結びつけている訳ですが、テムジンはこれが怖くない。最後の決戦の場面で、このことが重要な要素として働きます。
 映画の中でそのことは、テムジンが他の人物と大きく異なる部分として描かれます。それは伝説の人物に付きものの偉人性の判りやすい表現なんですが、必然であったとも言わせていることで、天然なだけではなく意思の人であることを示していると思いました。

 戦闘シーンも適度に挟まり、血もキチンと流れる。(CGだけど。)それなりに大きな画もキチンと取れているので、元国建国後、大部隊を率いてヨーロッパへ進行するするあたりも映画になれば面白いなと思いました。
 それから、浅野とジェムカの役の人は、モンゴル人ではないんで、見るからに浮いてます。これも普通ではないことの現れとして表現されているとは思いますが、同じアジアの人間でも文化や習慣、国の違いによって見た目がや雰囲気がずいぶん違うもんだなあと思いました。
 ちなみに「蒼き狼」は観ていません。

土俵のチンギス・ハーン 白鵬

土俵のチンギス・ハーン 白鵬