ティモシー・スポール七変化

 今日は昨日の疲れもあって一日ゴロゴロしてました。そこで延び延びになってた感想を。

 14本目、「魔法にかけられて」。
 まあ、時間も経ってしまったので気付いた点を箇条書きに。

  • 僕はオーソドックスなディズニーの2Dアニメは好きじゃないので、きちんと見たことはありません(PIXERは好き)。それでも、冒頭の15分程度のアニメパートは本当によくできていると思ったし、「美女と野獣」以降のモダンな絵柄(キャラクター)+伝統の動きの気持ち良さ、楽曲と動きのシンクロなど、前提となるディズニーアニメをきちんとカタチにして提示している点で好印象。それぞれの登場人物がアニメのキャラとしても再現されている点も重要なので、そこもきれいにクリアされていたと思いました。
  • 続いて実写(現実のニューヨーク)のパート。ジゼル(エイミー・アダムス)は散々なめにあって、ようやくロバート親子(パトリック・デンプシーとレイチェル・カヴィ)に助けられる。そのお礼に部屋のお掃除(男やもめなので部屋が汚い)というお約束パターンが展開されるんだけど、ここが見物。歌声で動物を召還・使役できるジゼルは、ニュ−ヨーク中から小動物や鳥、昆虫を集めて作戦を決行。ドブネズミや鳩、ハエ、黒くてテッカとしてコソコソ動く黒い奴などが部屋中を這いずり回る姿は圧巻。リアル「レミーのおいしいレストラン」的な描写の数々。その様子をまたさも普通のことのように振る舞うジゼルの狂いっぷりは見事(カーテンで服も作る)。本家にここまでやられると、今度「シュレック」のクリエイターはディズニーをコケにしにくくなったと思います。
  • やはり見せ場はセントラルパーク内でのパレード。ストリートミュージシャンとの絡みから始まり、質の高いダンサーを大量投入、ここぞとばかりの本格ミュージカルで観客を夢の世界へ誘います。ただここにいたるまでに、主人公を完全にイタい女として容赦なく描いているので、きちんと落差が出ていて、純粋で裏表のない女性としてロバート(バツイチの上に離婚調停の弁護人なので結婚や女性に夢を持てない)が彼女を受け入れることができるというクッションのようなエピソードしても機能している。たぶん近いうちにディスニーランドのアトラクションとして実演されること間違いなし(笑)の素晴らしさでした。
  • ティモシー・スポールナサニエル役)という非常の面白い(顔)の役者が登場。普段はやらない変装を何回かやる。これはジゼルに「毒リンゴ」を食べさせるため。この部分はちょっとスゴいと思いました。だって、ティモシー・スポールはそのままの顔で出るのが一番おいしい役者だから。僕の見た範囲ではどんな役でもほとんどメークなしで登場、それぐらいインパクトのある人(演技者としても)で、その彼が公園の飲食スタンド店員やメキシコ系の料理人、エジプト系のタクシードライバーなどに扮します。普段(普通の演出家)では絶対にお目にかかれない部分だと思えました。
  • ジェームス・マースデン(エドワード王子役)はいつも通り恋人をさらわれる(笑)。ユルい笑顔で好印象なんだけど、彼はどの映画に出ても最後には今カノを他の男(主人公)にさらわれ続けているので、今作でもその法則は発動。しかし最後にはバリバリのキャリアウーマンだったナンシー(イディナ・メンデル:キツめのアンジェラ・アキにか見えん)とロマンチック(ディズニークラッシック)に結ばれるのでよかったと思います。
  • スーザン・サランドン(ナリッサ女王役)は「ロッキー・ホラーショウ」以来の派手メイク、キワドい衣装で意地悪な女王を熱演。出演時間は短めなのが残念。最後に竜(女王の本性)を倒すのがジゼルなのは今風。
  • id:Dirk_Digglerさんのエントリー(http://d.hatena.ne.jp/Dirk_Diggler/20080330/p1)にあったゲイの話にのっかると、舞踏会のシーンでジゼルとロバートがダンスする際に交わされる会話。
    ジゼル:「あなた踊れたの?」
    ロバート:「ほんとは踊れたけど隠していただけさ。」
    といったやり取りあることから、実は隠れゲイだったのはロバートでないかと妄想。婚約者がとても女性的でない容姿のナンシーであることやこの時の彼の衣装がヒラヒラの王朝風ドレスであるのは偶然ではないのでは?。
 とにかくお約束にあふれた映画なんですが、それをきちんとやることがエンターテイメントにとってどれほど大切かということを明示している力作。パロディとしても一流だと思うし、楽しくておもしろいものを作るにはどうしたらいいかのお手本のような作品なので、自分も含めていつも映画を斜めにしかみることができなくなってしまった人が頭をリセットするにも良い作品だと思いました。