結果報告(8月29日)

 久しぶりの更新。この間サマソニ大阪に行ったり、RSRに参加すべく北海道に赴いたりと、活動的な8月。
 仕事もひと段落して、今週の週末に観たのがこの2本。

 期せずして「パリでアメリカン人が無茶苦茶する映画」2本立て。

 「96時間」は北米公開時に大変評判がよかったと聞き及んでいいたものの、脚本がベッソンということでほとんど期待しないで観賞。(トランスポーターシリーズとか酷いでしょ。)
 ところがどっこい、これがホントによくできたアクション活劇。「親ばか」というよりほとんど「娘キ○ガイ」のブライアン(リーアム・ニーソン)が、娘かわいさにパリを縦横無尽遺に駆け回る。ヨーロッパを舞台にした映画では最近流行りのヒューマン・トラフィック問題をメインに据えながら(実は「ホステル」や「イースタン・プロミス」と地続きの世界観)、戦争・貧困・経済格差によって再階層化される社会の現状、その隙間で暗躍するマフィアや行政の腐敗といった社会派然とした要素は控えめにして、主人公の行動原理をあくまでも「家族を救出する」という個人的な動機に収斂させることで、勧善懲悪の爽快さを獲得している。(海外で困ったアメリカ人を無理やり助け出すという流れはアメリカ映画の伝統。)
 後半こそベッソン的なハッタリ満載の展開になるも、前半から中盤にかけての各キャラの立て方やそれをキチンと利用した展開や見せ場の作りは、非常に丁寧かつスピーディで、観るものを飽きさせない。それと優秀なアクション映画には絶対に必要な「多すぎない登場人物」・「多すぎない台詞」というポイントをちゃんと守り、テキパキと進んでいくのも良し。(パリでブライアンを助ける相棒的なサブキャラすらいない。)
 またリーアム演ずるブライアンが、「アフター・ジェイソン・ボーン基準」で作られたキャラクターとして非常に優秀で、普段は「ただのおじさん」、でも一度本性を現すとほとんど無敵というある種の物語的ウソを効果的に使っている。その上元工作員ということで、敵を排除するという意味ではほとんど躊躇することなく相手を殺していく。アルメニア人マフィアに対しては、皆殺し(騙まし討ちや逃げる相手を後ろから撃つ!)アンド拷問という徹底ぶり。これは元警官や軍人という設定ではナカナカやりにくい。(最大のピンチの場面で「フォース」が発動してしまうのはご愛嬌ということで。)
 それにしてスッカリ「師匠キャラ」が定着したリーアム・ニーソンが、普通人の役で(ホントは違うが)映画に出ているを見れるだけでも一見の価値あり、お薦め。

 もう1本の「G.I.ジョー」は、さしずめお金のかかったアメリカ製「戦隊モノ」映画。世界征服を企む謎の悪の組織(劇中では「コブラ」)とそれに対抗する正義の部隊(←これが「G.I.ジョー」)というお馴染みの構図なので、日本人でも簡単に理解できる。その上原理不明のハイパーなテクノロジーの未来的武装ガジェットがわんさか登場するので、男の子なら萌えない(いや、燃えない)わけがない。
 ネット上で言われているような「バカ映画」というよりは、(いい意味で)全体に「ユルい映画」というほうが正確で、最近流行りのリアル嗜好ではなく80年代ぐらいまでは当たり前に作られていた昔懐かしいいい加減さを、派手なハッタリ全開で楽しむのが正解。今の時代にエジプトの砂漠の下や北極の氷の下に巨大な秘密基地を構える組織っていったい何?、なんて突っ込みを入れるなんて野暮で、ドリル型マシンで突っ込んだり、忍者が刀で大活躍したり、ピチピチのボディスーツに身を包んだ女性キャラがキャットファイトしたりとやりたい放題。おまけに加速装置付のパワードスーツでパリを滅茶苦茶にする展開には思わず拍手してしまいました。
 善・悪それぞれのキャラに過去話があって、それを交えながら展開していくのだが、これが各キャラ同士がそれぞれある種の因縁で結びついている。どちらの側も大きな物語を語るわりには、チマチマした事象に捕らわれた行動ばかりで、変に小さくまとまった「箱庭感」があるんだけれど、それがまたこの種ジャンルの作品にはつきもので可笑しい。
 見るからに悪そうな面構の悪役デストロ(クリストファー・エクルストン!)やコブラコマンダー(最初のうちはドクターだったはず。)、特にバロネス(シエナ・ミラー)はメガネ女子好きには破壊力抜群。個人的な大好きなのは、戦闘はほとんどしないが非常に重要な役割を受け持つ変装名人のザルダン(「ハムナプトラ」なんかにも出ていたアーノルド・ヴォスルー)。どっちかというと悪役側で目立つキャラが多い構成になっているんだけど、ジョー側では典型的な面白黒人枠のマーロン・ウェイアンズと台詞なしのスネークアイズ(レイ・パーク)が大健闘。
 元々が子供向け(対象年齢はせいぜい小学6年生ぐらいで、中学生だとちとツライ)の玩具から派生した作品なので、観たまんまの「快楽」を優先した脚本と演出法でサクサク進む展開は、さすがわかっている男、スティーブン・ソマーズ。むずかしくしすぎない感が絶妙で、「グリード」や「ハムナプトラ」の頃の切れが完全に戻ってきていると思いました。(最近の例でいくと「アイアンマン」はあれでむずかしいほう。)
 シリーズ化前提の第1話的なお話なので、オチは控えめな感じなんですが、それなりに上手くいっている作品だと思うので、興行成績にめげず(北米でも日本でも厳しい結果に)、あと何本か観てみたいと思わせるエネルギーのある作品だと思います。

ホステル2 [DVD]

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イースタン・プロミス [DVD]

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ザ・グリード [DVD]

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