「結果報告(4月11日)」

 週末はいつもどおり映画に行きました。

 2回目の鑑賞「ザ・バンク 堕ちた巨像」。おもしろい。
 「バンテージ・ポイント」とか引き合いに出して、構成が甘いと言ってる意見を観るとなぜかムカつく。(「バンテージ・ポイント」はそれなりに面白い映画ですが)2回目で気付いたちょこっとしたディテール。
 1つ目。最後に現れる初老の殺し屋は、カルヴィーニの本社で弁護士のホワイトを追い出す時に強面の黒服を引き連れて会議室に入ってくる人。「父ちゃんの敵は絶対に取る!」という絶対の意志と必然。堅牢なシステムに対峙するには、それ自身がより強い意志と壊れることのない深い結び付きを持った関係による何者でしかあり得ないということか。「スーパーマン」のような普遍化された正義には限界がある。映画版の「バットマン」(バートン版)では、自分の親を殺害したのが若い頃のジョーカーであると勘違いしてしまうほど「悪」を憎める精神が必要とされる。枠組みの外側にある何かとは、違法な行為を臆面も無く行えるということ以上に、そうすべき強い「動機」の有無ではないかと思う。
 2つ目。怒っていて冷静さを失っている時、ブチ切れて周りが見えなくなった時など「頭を冷やせ」と忠告されるのですが、この「頭を冷やす」とどんな良いことがあるかが、具体的にわかるシーンがある。
 3つ目。構成が甘い、ご都合主義という意見が出てくる原因の一つとして、ニューヨークでの捜査場面が挙げられると思うのですが、形成外科医院からいつもタクシーを利用してある所に行くコンサルタントさん。その足取りを追うサリンジャーさん一行はその行き先が空き地であったことを知って愕然とします。とりあえず腹ごしらえということでダイナーに入ったNYPDの刑事の前をコンサルタントさんが横切ります。普通ならそんなバカなという場面ですが、その前のカットでサリンジャーの背後にコンサルタントさんが通っているスポーツジムが映っている。(そのさらに前のカットでなめるようなカメラワークでジムの外観が映る。)そこからコンサルタントさんは出てくる。台詞や説明的なカットをあまり使わない演出法が多い映画なので、映っているものを全て観るぐらいの気合いがないと必要な情報を見落としてしまうかもと思うシーンでした。

 それでは初見の作品その1、「ダイアナの選択」。
 主人公ダイアナ(エヴァン・レイチェル・ウッド)は、田舎の保守的な街で皆が認める問題児。奔放な彼女の振る舞いは大人たち(母親や学校)を常に刺激する。親友のモーリーン(エヴァ・アムリ)は地味で大人しく、敬虔なクリスチャンでもあり、ダイアナとは正反対の性格。しかしふとした切っ掛けで知り合った2人は、いつしか互いの存在なしではありえないような、切り離すことができないほどの親密な仲になっていた。そんなある日、授業前にトイレに入った彼女たち。突然外では生徒たちの悲鳴が響く。乱入してきた同級生のマイケルの手には軽機関銃が握られていた。マイケルは二人に問いかける。「どっちを殺してほしい?」
 15年後、大学教授と結婚し一子(娘)をもうけたダイアナ(ユマ・サーマン)は人並みではあるが穏やかで幸せな時間を過ごしていた。しかし今年も高校時代に体験した乱射事件の日が近づいてくる。ナーバスになるダイアナ。それに加えて若い頃の自分にそっくりな娘のエマ(ガブリエル・ブレナン)は、自分を含めた周りの大人たちを振り回してばかりで、手がつけられない。
 事件の記憶と自分そっくりの娘の存在が、奔放すぎるほど奔放だった十代の頃の記憶を想起させ、トラウマとなった事件を否が応でも思い出させる。不安定になるダイアナ。そして若い女性と連れ立って歩く夫の姿を目撃した彼女の身にある出来事が降り掛かる。
 ここからは基本ネタバレで行くんですが、プロットを読んだ段階で、映画をたくさん観ている人なら大体2つのストーリーが思いつく。ダイアナが「生きている」場合と「死んでいる」場合の2つである。僕はとりあえず前者であることを前提にして映画を観ていたんですが、結論としては... 劇場で確かめてください。
 監督が「砂と霧の家」のヴァディム・パールマンなので、あくまでもリアル路線で行くと思っていたので少し騙された感じはしましたが、それでも不安定な十代(思春期)を描いた作品として良くできていると思うし、互いに親しくなっていくヒロイン二人の感情の揺れや十代の少女の鬱屈した感情が細かなディテールを積み重ねるように表現されていて、撮影の上手さ(スローの映像が幻想的であり、精神の不安定さを的確に表している)も相まって、非常に面白かったです。
 でも「死んでる」場合のお話としては若干ありきたり。あったかも知れない未来を十代のダイアナの生活や周辺から持ってくるなど、どんでん返し的な演出が利いているとは言えるのですが(最後に伏線的に回収します)、「生きてる」場合でお話を組みあげた方が、現代的な心理劇としてより面白い作品になったのではないかと思います。(原作があるので無理か?)
 でも主演のエヴァン・レイチェル・ウッドに関しては「サーティーン あの頃欲しかった愛のこと」に比べると非常に大人っぽくなっているのですが、それでも魅力的な十代を好演。特に水着姿が艶かしく(撮影もねっとりとその姿を捉えていて良し!)、赤いビキニの貧乳ぐあいがたまりませんでした。また相手役のモーリーンを演じたエヴァ・アムリは決して美人ではないのですが、出るところは出ているグラマー(決してポッチャリではない)で、地味な優等生タイプなのに脱いだらスゴいという男の理想を体現していると思いました。
 映画は十代のダイアナ中心に進むのですが、二人の百合的な関係が直接的でない描写で積み上げられていきます。日本人が文化系少女に抱く淡白で耽美な百合ぐあいとは違った、情熱的で肉感的な少女の関係が嫌味なしで繰り広げられる展開は、ある種の趣味を持った男性諸氏にはたまらないものがあるので、そういった方にはお薦めです。
 あとダイアナの娘エマを演じたガブリエル・ブレナンがとてつもなくかわいらしいので(小学生低学年なのにスゴく奔放)、小さな女の子に振り回されたい諸氏にもお薦めです。

 最後は「フロスト×ニクソン」。インタビューはボクシングだという映画(笑)。
 フロストとニクソンが一対一で殴り合いのような言葉の応酬を行う後半はまさにボクシング。ただドキュメンタリーをやりたいのか、舞台の映画化をやりたいのか、少しぶれている感じ。画面的には高い再現性があり、当時の雰囲気を良く再現していると思うのですが、そのわりには事実の面でドラマ(作り)が先行してしまったことが残念。フランク・ランジェラは全くニクソンに似ていないのですが、次第にニクソンに見えてくるからスゴい。特に「手」を効果的に使った演技が印象的。
 もう少し書きたいことがあるので、後日詳しく。

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