「結果報告(2月22日)」

 映画観てるけど、全然更新してないよ(第2弾)。

 「13日の金曜日」はあのサスペンススリラーのリメイク。予告編であたりが付いてように、part1〜3の辺をミックスした内容。冒頭でpart1の「犯人が首チョンパ」を再現するアバンがあって、その後最初の犠牲者5人が殺られるアバンとサービス万全(っていうか長い!もっとテンポよくサクッと怖がらせないと)その後の展開が、遺族(兄)に寄る犯人探しがメインというダルめの展開で、そのうちジェイソンの行動原理が規則性の無いものに。別にひねる必要はないので、キャンプ場に来たバカな若者をジェイソンがヌッ殺していく展開を重ねていけばお話が回っていくので、変な力み(とってつけたようなストーリー)はいらなかったのでは?(好きなのはわかりますが。)
 演出のマーク・ニスベルさんは、「テキサス・チェンソー」(これもリメイク)が好評の様ですが、全くフォーマットの違うホラー映画を同じ文法で作っても、それでは面白くなりません。ジェイソンはレザーフェイスではないので解釈が同じでは成り立たない。「13日の金曜日」はあくまでも怪物の出てくる「サスペンススリラー」として撮られるべきであって、「テキサス・チェンソー」と同じスラッシャーホラーの現代訳ではあかんでしょう。今作のジェイソンは頭を使って人殺しをし続けますが、動きや行動パターンがガタイのよくて人殺しが好きな兄チャンに過ぎないので、その神秘性というか、超越感が無くなってしまっている。キャラも大事な映画なので、そこら辺もキチンと目配せしないといけないのではと思いました。(その割にはオリジナルからの引用が多いので、アンバランス。)
 それと「怖い演出」と「驚かせる演出」は全く違うので、何でもかんでも、大きな音でドーンは止めましょう。この辺はアレクサンダー・アジャに学べ!とにかくネットではそれなりに評判がいいみたいですが、製作のマイケル・ベイを含めて、過去の名作をキチンと研究し直してから映画は作った方がいいと思います。(この前観た「ブロークン」を見習ってほしいですよ。)
 「ディファイアンス」は、エドワード・ズウィックの新作。汚れれば汚れるほどカッコ良くなるダニエル・クレイグが主演(青い瞳が強調されてたまらん!!)。東欧の話なのに登場人物がほとんど英語を話すのはご愛嬌。しかしこの映画のダニエルはカッコいい。「007」の新作では若干不足気味だった男気臭がタップリ。共演のジェイミー・ベル(三男)、リーヴ・シュレイバー(喧嘩っぱやい次男)も良し。特にリーヴさんは東欧のチンピラを見事に体現していたと思います。(ダニエルとジェイミーは少し線が細い。)
 二次大戦下、迫害されるユダヤ人とそれを助けた兄弟(彼らもユダヤ人)ということで、日本の杉原千畝氏と重ねるかたちで宣伝していたのですが、内容は東欧のパルチザン。エンドロールに登場する実在のビエルスキ兄弟の感じからすると、ソ連軍とある程度連携していたと思われる。生き残るためとは言え、厄介なことを引き受けてそれで苦労する主人公という意味では、今作もズウィックの作家性に沿った感じ。ただ実直ではあっても(地味な話なので仕方ないが)、見せ場(クライマックス)が弱いので多少観ている方が消化不良ぎみなので、その辺が残念でした。
 続いて「ハイスクール・ミュージカル」を字幕版で鑑賞。別にミュージカルにはスゴく興味がある訳ではなかったのですが、長谷川町蔵さんのblogで褒めていた(演出のケニー・オルテガさん)という単純な理由で鑑賞。この後観る予定の「シェルブールの雨傘」と「ロシュホールの恋人たち」の予習としても。確かによくできた娯楽映画、ただし、元々はシリーズものでそのラスト(アバンで出る原題には「3」が付いてる、今回は「卒業」がテーマ。)に当たる作品なので、キャラの紹介は無く、いきなり本編ということで若干ついていくのが大変。
 どこまでリアルか判断がつかないアメリカの高校生活(「アメリカン・ティーン」を見るのもよし)をミュージカル演出を通して描く。多分元々がテレビシリーズなので知っている俳優さんが皆無と言う状態ながら、見せ方の上手さで持っていかれる。楽曲も振り付けもわかりやすく、登場人物が歌い始めると自然に舞台的な状況に変化していく感じが気持ちいい。踊って歌うシーンは細かくカットを割らず(アップは少なめ)、あくまで舞台を正面から捉えることに基本を追いている。この辺りはセットや照明においても徹底されていて、主要なキャストがダンサーとしてバックを勤める辺りも、オーソドックスなミュージカル劇を踏襲している。
 ただ日本に住んでいるとほとんど共通点の無い海の向こうの高校生活を興味半分で眺める以上に感情移入出来ないので、それがちょっとツライ。ということでキャラを愛でるという見方を中盤からしていたですが、眼鏡萌えとしてはやはりピアノの彼女がたまりませんでした(爆)。主演がザック・エフロンということで、どこかで聞いた名前だなぁと思ったら、「ヘアスプレー」の彼と言うことで納得。あと振り付け家の彼がゲイっぽい(直接的なゲイ描写では無い)のはお約束。
 「チェンジリング」は、アンジェリナ・ジョリー(ブラピの嫁)主演のイーストウッドの新作。旦那の映画(「ベンジャミン・バトン」)も日本では公開中ということでやっぱり比べてしまう。映画としては当然こっちの勝ち。(比べてあまり意味が無いのでこれ以上は言いません。)
 少し前に映画化していたらヒラリー・スワンクがやっていたかも知れない役をジョリ姉が演じていますが、メイクと照明のおかげで顔立ちクッキリで、まるでお面のような顔だなと予告篇を観た時は感じたんですが、本編はそんなことは無く、ポロポロと涙を流しながらの熱演。彼女以外の俳優さんがほとんどメジャーな人ではなく、彼女を助ける長老派の牧師グスタヴ役のジョン・マルコビッチぐらいなのが、硬質な作品世界をキチッと作り上げることに貢献していると思いました。
 お話は、誘拐された息子が別の少年と取り違えられてさぁ大変という内容なのですが、それはあくまでも枕の部分で、中盤は原作はエルロイか思わせる腐敗した警察内幕もので、ヤクザ顔負けの暗黒組織と化したLAPDを内情を描き、その後は連続誘拐殺人(少年愛嗜好者では無く、あくまでも少年を殺したいだけのド変態として描写される。この辺の暗黒さもエルロイっぽい。→実際は少年愛の人であったようですね。)とそれを追う刑事と目まぐるしく展開していきます。ただそれをゆっくりとしたペースながら、しっかりと過不足なく描くイーストウッドの演出が見事。「銀残し」に近いザラザラとした青みがかった画面もハードな盛り上がりを際立たせていて吉。非人間的な隔離施設としての精神病院、事件解決後の殺人犯とのやり取りなど、緊迫したシーンの連続する。しかしながら主人公の於かれた状況がいっこうに改善されないというモヤモヤ感が最後まで持続する。
 泣き顔全開のジョリ姉が最後に一縷の望みを見いだし歩き始めるラストは「ある希望」を観客に提供し、なんとかそれまでのモヤモヤを晴らしてはくれる。しかし、その後も息子を捜し続けたという彼女の人生を考えると何とも後味の悪いエンディングで(結局息子さんは帰ってこず、彼女は一生宙ブラリン。)、一筋縄では行かないオチを用意している最近のイーストウッド作品を好きな人にはたまらない1本だと思います。

ブロークン [DVD]

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