「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」

 まず観終わって感じたのが、「ベン・スティラー、真面目。」の一言。
 コメディ映画ってそういう要素が多かれ少なかれあるものだと思うんですが、この映画も良くできた「メタ映画」。  今回の題材は「ハリウッド映画」or「ハリウッド俳優」。現在のハリウッドを象徴するような3人の俳優を、ベン・スティラージャック・ブラックロバート・ダウニー・Jrが演じてます。ただ、題材が「映画」そのものであるせいか、作ってる側との距離が近すぎて、結局内省的告白は中心になってしまい、後半失速するのが難点。
 スティラー演じる盛りの過ぎたアクション俳優スピードマンはもっと揶揄される存在にならないと映画としては弾けないんですが、そこは監督自身が俳優で、あくまでも自分たち自身の問題として描いてしまったことで、「笑い」に転化出来ていないのが残念でした。
 その点「ズーランダー」では、茶化しの対象が男性モデルということで、対象を徹底的に「笑い」へ変化することができていたので、お話の構造がほとんど同じの今作でそれができていないのは、やはり題材との距離感が影響したのかと思います。(あとオーウェン・ウィルソンの不在も大きいのかもしれない。)
 「戦争映画」からの引用はチョイスの仕方、再現性共に一級で、予算もしっかりした大作感。小ネタも聞いていて笑えます。あと最大の売りである○ム・○ルーズですが、最初の写真の段階では気付かなかったんですが、さすがに動いている場面では、声と台詞回しで割と簡単にネタは割れるんではないかと。というか、アレは誰が演じてるかわかったことが前提で面白いギャグだと思います。映画内で誰より一番の熱演でしたが、雰囲気的には「マグノリア」の時の役を思い出す熱さだと思います。バッチリ特殊メイクで変装(背以外は)した容姿は、ポール・ジアマッティでもいいかなとも思いました。(これはこれで観てみたい。)
 それと個人的な感想ですが、ジャック・ブラックが意外とこの手の映画には合わないなぁという感じがしました。
 今回も非常に癖のある役柄を一生懸命やっている感じだったんですが、どうも一人だけ演技が浮いているというか、ハマりきっていないというか。目立っているのに埋没していると思いました。
 この人は最近観た「僕らのミライへ逆回転」ような、普通の人たちの中でスゴくエキセントリックな役をやる方が良くて、コメディアンとしては優秀でも、扱いが難しい俳優さんだと思いました。
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