順番が悪かったんで、印象が薄くなってしまったんですが。

 31本目、「P2」。

 よくできたB級ホラー、大変がんばりました。次回もこの感じを忘れずに、がんばってください、以上。
 おっと、これではいけない。でも、この映画を観た後に「ミスト」を観ちゃったんで、どうしても相対的な評価が低くなってします。
 これは「P2」が悪いわけじゃない。そうだな、「アレクサンドル・アジャが監督でないことが原因じゃ」と思おう。


 おふざけはこれぐらいにして、本心を言えば、少し期待はずれの出来。
 アジャの書いた脚本は、基本に忠実で、この種の監禁・ストーカー系の話として押さえるべき点はキチンと押さえている。
 それと面白かったのが、冒頭から前半(ヒロインが拉致られるまで)にかけての展開が撮り方をかえれば、ロマコメ風にも撮れること。
 バリバリのキャリアウーマンのヒロイン(最近彼氏と別れたばかり、今年は実家でクリスマス)と日頃から彼女に憧れていた警備委員の僕みたいなシュチュエーションで、たまたまビルに閉じこめられた。「今夜は一晩中彼女と一緒だ、どうしよう、さあ大変」みたいな映画にも出来る。それくらいしっかりした構造の脚本。
 暗めのハンサム、トーマス(ウェス・ベントリー)は、一見して気が弱く親切そうに見える点もよい。その後の豹変振りや躁状態での残虐行為の数々がよい落差となって恐ろしさを増している、いいー。 なにを言っても、何をやってもトーマスは満足しない(でも犬が好き)、そんな不条理さを十分に表現できている。
 ヒロインのアンジェラ(レイチェル・ニコルズ)はテレビ出身の女優さんらしいけど、記号的にはまさに理想系。ムチムチボディに金髪と青い目、おかしな人間やモンスターに追われることを運命づけられたかのよう。
 しかし、個人的には映画前半のOLルック(髪はアップ、Yシャツにタイト目のスカート)の方が好み。別に悪くないですよ、溢れんばかりの上乳ドレスも。
 これは演出的なことも関係しているので、彼女のせいだけではにけど、「怖い」とか、「恐ろしい」といった表情をする場面の顔があまり綺麗でない。この辺も個人的な感覚なので説明しにくいけど、よいホラーの女優さんは、単に肉感的であるとか、露出が多いとかだけではなく、艶かしく苦悶の表情を浮かべることできるかっていうことも重要。
 その点、このレイチェルさんはまだ経験不足。もっともだえ苦しんで、苦悶しながら大きな声をあげてほしかったなあと思いました。(決して僕個人の性癖とは関係ないです。)


 あと、こんなご時世でよくがんばっていると思う点は、前半のセクハラ上司を車でグシャのシーン。短めですが、結構しっかり死体が写るのが良い。(内蔵どろりもバッチリ。)でも、こんな楽しいシーンがほとんどこれひとつだけなのは残念。
 「ハイテンション」では、タンスの角で親父の頭をグシャだったアジャにしては控えめ。もっとがんばれなかったのかな。 せっかくR-18なんてたいそうなものをいただいている割には、その種のシーンが少なすぎ。
 やはり今のアメリカ映画としてはがんばっているとは思いますが、70年代や80年代のホラーを通り過ぎてきた身としては、非常に食い足りない。必要にして最小限の登場人物、殺されるべき人間はキチンと殺される。そんな由緒正しさに溢れていながら、シーンとしては大人しさが連続するのが残念。
 これからもこの種の映画はいろいろと規制されていくと思うので、作ること自体が戦いみたいな場面もあるでしょうが、アジャを筆頭に、観客を楽しませること、自身が作りたい世界を押し広げていってほしいなあと思うしだいであります。

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