「まぁてぇ〜、ルパン」の世界

 12本目は、「ジャンパー」。

 アメリカのコミックというかラノベ原作(本当かよ!)ということで、内容的には予告編で全部という感じ。
 個人的に興味があったのは、自分と監督のダグ・リーマンとの相性。彼の出世作「ボーン・アイデンティティ」は 非常に面白くて、アクションものとしても斬新で(先祖返りした感もあるが)、新しい時代のシリーズとして今に至っている。
 ボーンシリーズは、諸事情があって2作目以降は製作にまわり、イギリスの青芝さんが後を引き継いで現在に至っているんだけど、 その間撮った「スミス夫妻」は個人的に大ハマリ。
 スパイ同士の壮大な夫婦喧嘩はもっと面白くなるはずが、私生活でもラブラブになってしまったブラピとアンジーのせいでお惚気にしか見えない。 さらにクライマックスのスーパーマーケット内部での銃撃戦も、明らかに遅れてきた「ガンカタ」。(その上アクションの切れが悪い。)
 中盤から眠くて眠くて仕方なく、本来寝れないはずのアクションシーンの多くで、意識が飛んでしまった。(そのせいで2回見たのだが、2回とも同じような場所で意識がなくなった。)


 相性が悪いなっていうのがその時の感想で、おかしいなって思っていた。 今度こそ、この疑念を払拭できるかなって思いで劇場へ赴いたんだけど結果は無残なものに。
 だって、ジャンパー飛びまくりの後半、面白いはずなのに意識が飛ぶ飛ぶ。結局、どうしてお父さんが死んだのかわかんない。 サミュエルが得意の説教をあんまりしないまま、グランドキャニオンに置いてきぼりで終了。
 なんだそりゃ!。
 まあ寝てしまったのは、自分の体調のこともあるので、ある程度割り引いて考える必要があるけど、どうしたダグ・リーマン
 ジャンプするシーンは、CGが効果的に使われているし、編集もスピーディでよくできている。 ただ、肝心のアクションがそのスピードに引っ張られるようにわかりにくい。カットは短い上に、大きな画が無いので、キャラクターの動きを追うのが難しい。
 ボーンで発明されたゆれゆれのカメラワークとはちょっと違って、動けない俳優の姿を安易にごまかすために多用されるスピード重視のカット割りばかりなのだ。「ボーン」の時とは違うかも知れないけど、スミスではちゃんとできてたのに。
 
 画的な部分はそんな感じ。でも深刻なのは多分ストーリーのほう。
 思春期に特別な力を得た主人公が、その力を使って自己を実現していく。その過程で、利己的な精神ではない何かに目覚めて、大人としての道を歩んでいく。
 大まかに言えばそんな感じなんだけど、これ映画版「スパイダーマン」と同じ。ってことは、アメリカンコミックの王道ストーリー。 しかし、「スパイダーマン」では、主人公がヒーローとしての役割に目覚めるけど、「ジャンパー」では、それが起こらない。
 
 主人公デヴィッド・ライス(ヘイデン・クリステンセン)は、自分に無理解な父親のもとを離れるため、期せずして得た力を使い、都会へ逃亡。銀行の金庫に忍び込んでは金を盗み、だらだらと悠々自適な生活を送っている。
しかし、大金持ちのフリをしていても、結局はただの泥棒なので、ジャンパーを付けねらう組織「パラディン」に目をつけられる。そのリーダー・ローランド(我らがサミュエル・L・ジャクソン) はデヴィッドを見つけ出し、ニューヨークの彼の住まいを急襲する。
 寸でのところでローランドの魔の手を逃れたデヴィッドは、行く当ても無く、ふらっと故郷の町に舞い戻ってしまう。 初恋の人ミリー(レイチェル・デビソン)に再開した彼は、成功者を装い、彼女と共にローマへ。(その過程で、ミリーの元カレを金庫に置き去り。)
 ところが、コロッセオに潜入した2人の前にもう一人のジャンパー、グリフィン・オコナー(ジェイミー・ベル)が現れる。そして、そこには彼らを追う2人のパラディンが現れる。

 とまあ、ココまではそれなりにおもしろかったんでちゃんと見れたんだけど、この後から記憶が定かでない部分が増える。 この後、グリフィンと日本に来たり、お父さん(マイケル・ルーカー)が死んだり、ミリーがローランドに捕まったりするんだけど、あんまり盛り上がらない。 結局は、ミリーを助けるために単身ローランドと対決することに。(正確に言えは、グリフィンを巻き込んでいる。)
 グリフィンはデヴィッドと違って、かなり意識的に力を悪さに使っている。パラディンの刺客を始末することにも躊躇がない。 対して彼は、最初から微妙な置き手紙(お金は借りてるだけ)を金庫においてくるなど、偽善的な行為が目立つ。
 やっぱりアメリカでは、よほどのことがないと主人公は悪事を働くことは許されないらしく、デヴィッドの行動は始終中途半端なままだ。 その上、宿敵ローランドは常識的には正しいことをしているのに悪者扱い。でも、結局は死なない(デヴィッドは殺さない)とこちらも中途半端。

 日本人としては、いっそのことデヴィッドは大泥棒って設定にしてもらったほうが良かったのではないか。そうモデルは、あの泥棒の3代目。
 テレポート(超能力)だとあまり正統とはいえないけど、どんな場所にでも出入りできて、誰にもできない方法でお宝を盗むっていうコンセプトは残る。 彼は次第に困難な状況に挑むようになり、社会はこの怪盗の動向に一喜一憂する。
 そうなると、ローランドは当然「銭形警部」。だからパラディンは「ICPO」。
 「まぁてぇ〜、ルパン」(声:納谷悟朗)、いやいや「まぁてぇ〜、デヴィッド」って感じで、世界中を追い掛け回す。
 どうせなんでグリフィンには、得意な攻撃方法の属性を付けて、次元か五右衛門をやってもらうとして、ミリーはもう少し貫禄のある女優さんに交代。(不二子役だから。)
 そうすりゃ、クローン人間と闘ったり、2人してヨーロッパの小国に忍び込んで、お姫さまを助けたり、偽札作っている伯爵と湖に浮かぶお城で対決もできる。 最後は、ボロボロのフィアットに乗って、2人で何も盗らずに逃亡。後を追うローランドは、後一歩のところで彼らを取り逃がし、お姫様にこう呟く。
 「イヤ、ヤツはとんでもないモノを盗んでいきました…」、おっとここまで。

 妄想はこの辺にして、結局主役がどうしたいのかわからない映画は、見ていてツラい。さらに半径3メートルぐらいの狭い範囲でしか思考できないのでは、 お話が回っていかない。
 せっかく2人のジャンパーが、見るからに腹の中に何かどす黒いものを持ってそうなキャラ(いい男だけど悪人面)なんだから、原作改変しても、その辺りで挑戦してほしかったかな。
 ヘイデンはもともと悪のフォースの持ち主なので、何でもできるはずなの残念だなあと思いました。

 あと、ダイアン・レイン(デヴィッドのおかんでパラディン)は、「運命の女」以降見事な復活。でも「ブラックサイト」はちょっと不安。

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