まるで違和感なし
いつものことながら、簡潔で見事なエントリー。言うべきことはほとんど揃っているので、こちらをご覧ください。
それだけでは能が無いので、少し気になった点を幾つか。
おとぎ話(ファンタジー)を作り出す上での、外郭としての「世界」はどうあるべきか。社会制度・風俗ははっきりとイギリス風(階級社会やロンドンの町並み、タブロイド紙、パブ等)ながら、皆がドルと通貨として使い、役者もアメリカ英語を話す。(一部例外あり)
あえて匿名性を持たすことで、ファンタジーの世界観を強化してみせることが演出家の意図ではあろうが、そのために「物語」という嘘を下支えするものがかえって希薄となり、強度が落ちてしまったのではないだろうか。
表現としては、ジョージ・ミラーの「ベイブ/都会へ行く」と同じ。家出したペネロピが泊まるホテルの窓の外に広がる夜景は、西洋の大都市のコラージュとなっている。でもベイブの場合は、本当の意味でブタ目線なので成り立つ部分があるわけで。
お話としては、自立すべき年代の若者の葛藤と成長を寓話というよりストレートに描いているので、より現実的な世界に立脚したものにすべきではなかったのか。 できれば現代のイギリス(ロンドンとその郊外とか)ないしは、アメリカ東部を舞台として押し通すことができれば、映画特有の魔法のような瞬間を得ることができたかもしれない。
衣装・ヘアメイク・美術設定が秀逸。特にペネロピが生活する部屋がすばらしい。
ジェームス・マカヴォイが、「ラストキング・オブ・スコットランド」の傲慢で否な白人とうって変わって、繊細でナイーブな平民の青年を好演。
クリスティーナ・リッチはまさにはまり役。ただし、ブタ鼻がハマりすぎていて、呪い解けた後の彼女の顔に物足りなさを感じてしまうのはちょっとした副作用。
キャサリン・オハラが母親だと、呪いじゃなくてもブタに似た子が生まれるんじゃないかと考えてしまう瞬間が何度か。
甘いハッピーエンドのおとぎ話という風評があるようだけど、これ以外のオチは考えられない。無駄なひねりは不要の佳作。
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